さきたま古墳公園(行田市)

最終更新日 2023.7.6 撮影日 2023.4.19&2021.3.10他

さきたまテラスゾーンが完成

さきたま古墳公園 観光物産館さきたまテラス
2023年4月にオープンした「観光物産館さきたまテラス」。地場産品販売と店内飲食可能なカフェを備えています。「行田の餃子」がイチオシのようです。

拡張工事が続いていた「さきたまテラスゾーン」が2023年4月1日オープンしました。

目玉となるのは地場産品販売と店内飲食可能なカフェを備えた「観光物産館さきたまテラス」です。

観光物産館さきたまテラス」の建物自体はそれほど大きくないのですが、「さきたまテラスゾーン」と名付けられた今回オープンのエリア全体としては、合わせると2.1haほどの面積があります。

カフェのイチオシは「行田の餃子」のようです。

県外の方から、「ぎょうだ(行田)」を「ぎょうざ(餃子)」と聞き間違いされることが多かったそうで、それを逆手に取ったネーミングだとか。

ほかにわたぼく牛乳を使用した「わたぼくソフトクリーム」「古代米カレー」などのメニューがあります。

地場産品販売エリアで一番に目についたのはページの一番下に書いた「はにわ処 さかもと」さん制作のグッズです。

さきたま古墳公園 観光物産館さきたまテラスで販売している「はにわ処さかもと」の「ねこはにわ」
「観光物産館さきたまテラス」で販売している「はにわ処 さかもと」さんの「ねこはにわ」。ものすごくかわいい。

その他、販売エリアで目についたのは、「冷凍 行田の餃子」「冷凍 行田の餃子(チーズ)」「行田産青大豆使用のきなこ」「古墳モチーフのTシャツ、買い物袋」「忍城グッズ」「きくらげうどん」「稲荷山生うどん」「くるみドレッシング」「勝ち虫グッズ」「足袋グッズ」「いがまんじゅう」など。

観光物産館さきたまテラス」については詳細に紹介した別ページを設けたので、ご覧いただくとわかりやすいかも知れません。

「さきたまテラス」の隣にあるのが「にぎわい広場」で、イベント開催やキッチンカー等による出店スペースとしての活用が考えられているようです。

「にぎわい広場」に常時出店のお店が出てきていつもおまつりみたいな雰囲気になると最高ですね。フリーマーケット等にも良さそう。

さきたま古墳公園は、博物館や大きな古墳をはじめとしていろいろな施設の整ったたいへん広い公園ですが、飲食や物販の店舗がないのが観光地としては物足りない部分だったのでホントに良かった。

さきたま古墳公園 園内案内図 2023年4月版

さきたま古墳公園 2023年4月版園内案内図
さきたま古墳公園 園内案内図。
園内に掲示してあった案内版を撮影しました。
さきたま古墳公園 2023年4月版園内案内図
さきたま古墳公園 園内案内図
オフィシャルサイトからの借用です。
この場を借りて御礼申し上げます。

工事は継続中

さきたま古墳公園 新しくできた広場
2019年、博物館の南側に新しくできた広場。少しだけ高くなった丘と頂上に木が1本。周囲は芝生広場。<2021.3.10>

「観光物産館さきたまテラス」が完成して公園拡張工事は終わったわけではなさそうです。

今回の工事では、まず、2019年10月「さきたま史跡の博物館」の南の用水路を越えて「さきたま緑道」の支線付近までのエリアがオープンしました。

このエリアは「サンクチュアルゾーン」と呼ばれているようです。

公園南側の入口となる芝生広場で、中央に丘があって木が1本植えられています。博物館側には樹木が植えられました。

下の地図に「拡張エリア」と示した「奥の山古墳」と「鉄砲山古墳」の左側(西側)の突き出した部分です。

2023年4月オープンの「さきたまテラスゾーン」は、博物館の左側(西側)のナタのようなエリアです。

以前「田舎っぺうどん」があったあたりですね。

下の地図の「拡張エリア」と書いた矢印の矢先のあたりは、2023年7月現在も完成していません。

いったいどんな計画があるのか。楽しみですね。

さきたま古墳公園 拡張エリア
左下の「拡張エリア」とは、ぼくが書き込みました。

「埼玉県名」発祥の地

さきたま古墳公園 埼玉県名発祥之碑
博物館とレストハウスの間に立っている「埼玉県名発祥之碑」。畑さんの筆です。

「さきたま古墳公園」の周辺は、「埼玉」という地名が生まれたところです。

今でも「行田市埼玉」という住所があり、公園の傍には「埼玉」という名前の信号もありました。

「さきたま史跡の博物館」の前には「埼玉県名発祥之碑」という石碑が立っています。

石碑が建てられたのは昭和62年4月。文字はずっと前の県知事畑和(はたやわら)さんの手によるものです。

奈良時代に編纂された『万葉集』に、「前玉(さきたま)」や「佐吉多万(さきたま)」などと地名を表記した和歌が収められています。

平安時代なると「埼玉」とか「佐伊太末」との表記が見られるそうです。「さきたま」を狭い地域名とし、より広い郡のようなイメージで「さいたま」と表記するようになったとの解釈のようです。

狭い地域を示す「さきたま」が、現在の行田市埼玉周辺のことなのだとか。

ちなみにさきたま古墳公園内には「前玉神社」があります。

大きな古墳が9基ある公園

さきたま古墳公園 稲荷山古墳
「稲荷山古墳」。周囲はこんなきれいな芝生広場になっています。9基の古墳群で、登ることができるのは、「丸墓山古墳」と「稲荷山古墳」のみ。

「さきたま古墳公園」は、行田市の市街地から南東へ約1kmに位置し、大きな古墳が集中して数多くあることで全国的に知られています。

今から1300年から1500年くらい前に建造された古墳が、大きなものだけでも9基もあります。

どういう人が葬られているのか、学術的には定かではないようですが、大昔武蔵の国に大きな勢力を持って支配していた人々なのは間違いないでしょう。

『日本書紀』に武蔵の国の覇権を巡って、南武蔵と北武蔵で大規模な戦闘があったとの記述があるようです。

勝利を収めた近畿方面からの援護を受けた勢力の古墳とする説と、元々近畿方面から開墾等を目的で派遣された人々のものとする説があるようです。

昭和初年に「さきたま風土記の丘」として整備され、昭和51年から県営の「さきたま古墳公園」として活用されることになりました。

2017年現在総面積は37.5ha。都市計画で決定されているのは97.0haですので、まだ39%ほどしか完成していません。毎年少しずつ用地買収が進められ拡張が進んでいます。

たとえば、「将軍山古墳」は昭和の後期までくびれの部分を大きく削って民家と作業場が建っていました。そこを買収して平成に入って古墳全体を復原したのだとか。

「将軍山古墳展示館」には民家があった当時の写真が展示してあります。

さきたま古墳公園内には9基の大古墳のほかに、芝生広場、はにわの館、さきたま史跡の博物館、将軍山古墳展示館、移築民家、薬用植物園、休憩舎、芝生広場他、駐車場などの施設があります。

発掘されたのは2基だけ

さきたま古墳公園 丸墓山古墳
桜の名所としても知られる「さきたま古墳公園」。特に「丸墓山古墳」は絶景として知られています。普段はこんな感じですが、桜が満開になると……さきたま古墳公園 空に浮かぶ満開の桜

「さきたま古墳公園」の古墳で一番目を惹くのが、大きな丸い山にしか見えない「丸墓山古墳」です。直径が105mで高さが18.9mもあり、日本で2番大きな円墳と言われています。

1590年の豊臣秀吉と小田原北条氏の戦い(小田原の役)で忍城を水攻めにした石田三成が、水攻めの進行具合を確認するために「丸墓山古墳」の頂上に本陣を築いたとされています。

また、「丸墓山古墳」へ至る道は周囲より少し高くなっていますが、これは石田三成が水攻めで築いた「石田堤」の一部だそうです。

そのほか大きな古墳では、頂上で粘土と河原石で復元された2基の埋葬施設が見られる「稲荷山古墳」、全長が138mもあり、武蔵の国で最も大きな前方後円墳といわれる「二子山古墳」、実物の横穴式石室を建物の中から見学できる「将軍山古墳」などが並んでいます。

「さきたま古墳公園」内にある古墳で発掘されたのは「稲荷山古墳」と「将軍山古墳」だけです。

その他は古墳の周囲で調査が行われたのみで、例えば博物館の奥にある「瓦塚古墳」や「鉄砲山古墳」の周囲からは埴輪や土器類が大量に見つかっています。

古墳を発掘すれば大発見があるような気がしますが、文化庁が許可しないのだそうです。

ご存じの方も多いと思いますが、この地は「埼玉古墳群 ―古代東アジア古墳文化の終着点―」として世界遺産登録を目指しています。

残念ながら平成20年に国内の暫定一覧表への記載が見送られてしまいましたが、未発掘の古墳から歴史的に重要な発見があれば再び「世界遺産」への道が開けるかもしれないのに、なんて思ってしまいます。

今後に期待でしょうか。

国宝が展示されている博物館

さきたま古墳公園 さきたま史跡の博物館 金錯銘鉄剣
「金錯銘鉄剣」。「獲加多支鹵大王」の文字を確認できますか?

「さきたま古墳公園」内にある「さきたま史跡の博物館」では、古墳からの出土品を多数見学することができます。

博物館内の様子は、さきたま古墳公園 さきたま史跡の博物館へ。

「将軍山古墳展示館」と共通で入場料200円(一般:200円、学生:100円、中学生以下と65歳以上:無料)。

博物館にはボランティアの方がたくさんいらっしゃいます。

どの方も気さくでいろいろと説明をしてくださいますので、是非、子どもたちと一緒にお話を聞いてみてください。意外とおもしろいですよ。

「さきたま史跡の博物館」で最も重要な展示物は、「稲荷山古墳」から1968年に出土した全長73.5センチメートルの「金錯銘鉄剣(きんさくめいてっけん、きんしゃくめいてつけん)」です。

他の出土品とともに1983年に国宝に指定されました。

ボランティアの方のお話だと、本来、国宝は国のものなので国の管理施設に置いておくものだそうです。

しかし、金錯銘鉄剣はこちらの博物館に展示されています。これはかなり意義深いことだとか。

ちなみに、ぼくが持っている『詳説 日本史研究(2003年第8刷)山川出版社』には、「金錯銘鉄剣」ではなく、「辛亥銘鉄剣」とあります。

辛亥とは鉄剣の銘に刻まれた「辛亥年七月」に由来しています。「辛亥(かのとい)年」は西暦471年説と西暦531年説とありましたが、現在では年は西暦471年がかなり有力となっているそうです。

「金錯銘鉄剣」は、展示施設の中央に置かれた腐食を防ぐために窒素ガスを封入したケースに展示されています。

さきたま古墳公園 さきたま史跡の博物館
博物館にある大きな馬の埴輪。足が長くて驚きました。

覗き込むと、金色の漢字が見えてきます。この文字は、1978年に腐食を保護するためにX線処理をしたときに発見されました。全部で115文字あります。

未だに金ぴかですが、何も手を加えていないそうです。これもボランティアの方が言っていたことですが、鉄剣の先端に行くほど銀の含有量が多くなるそうで、理由はわかっていないとのこと。

表に埋葬者の8代に渡る系図が書かれ、裏に「獲加多支鹵大王」(ワカタケルノオオキミ)の「杖刀人首」(親衛隊長)だったと書かれています。

「獲加多支鹵大王」とは、雄略天皇のこと。記紀に記された推古天皇以前の天皇の存在は議論の対象でしたが、この発見により、雄略天皇は実在したと証明されたと解釈しても良さそうです。

こうした歴史的出土品を見ることは、子供たちだけでなく大人でも貴重な体験になりますよね。

「さきたま史跡の博物館」では、ほかにも埴輪やきれいな勾玉や甲冑などを見ることができます。じーさんになったら、こんな博物館でボランティアをやりたいと本気で思ってしまいました。

埴輪(土器)と勾玉(まがたま)作り体験

さきたま古墳公園 はにわの館
「はにわの館」内部。体験は、埴輪を作っても土器を作ってもOK。圧倒的に埴輪を作る人が多いようですが、絵心に乏しいぼくらは土器を作りました。

「さきたま古墳公園」で、是非子どもたちに体験させてあげたいのが、「埴輪作り」と「勾玉作り」です。

埴輪(土器)作りは、「はにわの館」で行います。こ

ちらは入場料は無料ですが、粘土代金が必要(多め−大人1,000円、少なめ−子ども600円 大人でも子ども分量でOK。充分楽しめます)。写真による製作体験記はこちら → → さきたま古墳公園 はにわの館

埴輪と土器によって作り方が違うので、どちらを作るか最初に申告する必要があります。指導員の方が丁寧に教えてくれますよ。

できあがったら館内の棚に置いて乾燥させます。乾燥後焼いて完成。完成したら、宅急便等で送ってもくれるそうですが、簡単に壊れてしまう弱いものなので、できれば引き取りに来てもらった方が安全とのことです。

完成は1ヶ月後くらい。3ヶ月かそれ以上くらいは置いておいてくれるそうです。

「さきたま史跡の博物館」では、勾玉(まがたま)作りにチャレンジすることができます。受付で200円を支払い、3cm四方程度の滑石とヤスリ紙3枚(荒削り用、仕上げ用、光沢用)が入った「勾玉作りセット」を購入。

展示室横の部屋で、ボランティアの方々に指導してもらって磨き上げます。

どちらの体験も1時間半前後はかかりますので、午後3時ころまでには始める必要があります。

「ナニコレ珍百景」登録

さきたま古墳公園 丸墓山古墳 山頂の桜
桜の名所でも知られる「さきたま古墳公園」。特に「丸墓山古墳」山頂の桜は、ご覧のような絶景です。詳しくは、「さきたま古墳公園 満開の桜」をご覧ください。<2019.4.6>

「はにわの館」の傍に休憩舎(レストハウス)があります。大型休憩施設は道路を挟んで博物館の反対側にもあります。このエリアは2009年ころに新しく完成しました。広い芝生広場もあります。

広い芝生広場の真ん前にオープンして以降、10年以上に渡って愛された武蔵野うどんの「田舎っぺうどん」は2020年2月10日閉店しました。

冒頭に書いたとおり、新ゾーン建設のためです。

丸墓山古墳の周辺には桜の木がたくさんあって、名所としても知られています。

山頂の桜を下から舐めるように眺めるのがポイント。運が良ければ、青空をバックに手前に黄色い菜を従えた美しい桜の絶景を堪能することができます。詳しくは、さきたま古墳公園 満開の桜 をご覧ください。

「さきたま史跡の博物館」の横手には、移築した古い民家が立っています。古民家の更に奥に行くとまだまだ古墳があって、昭和54年に開設された薬用植物園もあります。

さきたま古墳公園 焼失してしまった「はにわ処 さかもと」さきたま古墳公園 「はにわ処 さかもと」焼失後の跡地
上が「はにわ処 さかもと」さん。下が焼失後に撮影した同じ場所。この地で再開は不可能だそうです。

ちょっと歩きますが、「将軍山古墳展示館」では、横穴式の石室を見ることができます。

銅製の人間が副葬品と共に横たわっている姿はちょっと不気味ですが、好奇心は満たしてくれます。

「はにわの館」で無料で自転車が借りられますから、「将軍山古墳展示館」まで自転車で行くのも良いかもしれません。そのまま、行田市内を観光したり、隣接する「さきたま緑道」を走るのも楽しそうです。

自転車は、「観光案内所」「行田市郷土博物館」「はにわの館」「古代蓮の里(蓮の花の開花期間のみ)」ならどこへ返しても良いそうです。

余談ですが2012年7月までは公園を結ぶ信号のところに「はにわ処 さかもと」というお店がありました。

店内で行田名物「ゼリーフライ」を揚げてもいらっしゃって公園の名物的存在でした。

さかもとさんにある「珍しい自動販売機」が、テレビ朝日の「ナニコレ珍百景」に登場したのは2008年1月30日です。めでたく【珍百景No.12】「小銭で買えるタイムカプセル」として認定されました。古銭が100円か200円で買える自動販売機で寛永通宝やお札も入っていました。

しかし2017年現在は更地でお店はありません。2012年7月24日午後、ゼリーフライを揚げていたコンロが火元の火災で全焼してしまったのです。

最後に当時の写真と現在の写真を掲載しておきます。懐かしい。

冒頭に書きましたが、その「はにわ処 さかもと」さん制作のグッズが「観光物産館さきたまテラス」で買うことができるようになりました。

アクセス他

電車
JR高崎線「北鴻巣駅」からさきたま緑道で徒歩4.5km(約60分)
バス
JR「吹上駅」から朝日バス 佐間経由行田車庫行 「産業道路」バス停下車 徒歩約15分
JR「行田駅」または秩父鉄道「行田市駅」から市内循環バス 「さきたま古墳公園前」バス停下車 徒歩約2分
クルマ
東北自動車道羽生ICから北西へ約12km
駐車場
2ヶ所 無料 普通車295台、障害車用8台、大型車33台

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